― 鳥居の色と、大地のちから ―
自然案内人:ゆき
新しい年が始まり、森は一年でいちばん静かな季節を迎えます。
1月の森は、色数の少ない世界。木の幹の色、針葉樹の深い緑、そしてすべてを包み込む白い雪。
そんな森を歩いていると、不思議と感覚がひらいていくのを感じます。
風の音や、自分の足音までもが、いつもより少しだけはっきりと耳に届くのです。
今日は、新年を迎えるこの時期に、
私たちが自然と目にしている「ある色」について、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
それは――
朱色(しゅいろ)です。
1月、なぜ朱色が心に残るのでしょう
初詣で神社を訪れ、鳥居の朱色を目にしたとき。
どこかハッとしたり、背筋がすっと伸びるような感覚を覚えたことはありませんか。
冬の澄んだ空気の中で見る朱色は、
凍てついた大地に灯る小さな焚き火のよう。
自然界では少しめずらしいこの色は、
「祈り」や「守り」の気配をまといながら、そっと心をあたためてくれます。
今日は、この朱色のもとになっている
「辰砂(しんしゃ)」という存在をたどってみましょう。
大地の奥から生まれた、朱色のもと
朱色は、花や果実の色ではありません。
その正体は、地球の奥深くで、長い時間と熱によって生まれた鉱物――辰砂です。
辰砂は、硫化水銀からなる鉱物で、
海外では「シナバー」とも呼ばれ、古代から特別な色として扱われてきました。
日本でもこの石は、ただの鉱物ではなく、
「色としての力」を持つ存在として大切にされてきました。
「辰砂」から「丹(に)」へ —— 色として生きる朱
ここで少し、言葉のお話を。
辰砂は、山や大地から採れる「石の名前」。
それを砕き、精製し、顔料として使うとき、日本では「丹(に)」と呼ばれてきました。
辰砂:自然界に存在する鉱物
丹:祈りや守りを込めて使われる朱色の顔料
名前が変わることで、
石は「素材」から「意味をもつ色」へと姿を変えたのです。
命を守るための、朱色の知恵
丹には、防腐や防虫の効果があります。
神社の鳥居が朱色に塗られているのは、
魔除けという精神的な意味だけでなく、
木を腐食から守り、長く保つための実用的な知恵でもありました。
朱色は、
次の季節に芽吹くための「土台を整える色」。
自然とともに生きてきた人々の感覚が、
この色の中に、静かに息づいています。
朱色がくれる、心のあたたかさ
色彩心理の視点から見ると、朱色はとてもエネルギーの高い色です。
気持ちを切り替えたいとき
冬の寒さで、心まで縮こまりそうなとき
自分を取り戻したいとき
そんな場面で、朱色は
「大丈夫だよ」と声をかけるように、そっと背中を押してくれます。
おわりに
1月の静かな森と、朱色の記憶。
新しい年のはじまりに、この色のあたたかさを味方につけてみませんか。
次の芽吹きの季節、
あなたの心が、今より少しやわらかく、明るくありますように。
森の静けさの中から、そっと願っています。
本ブログでは、これまでに学んできた内容をもとに、情報を整理してまとめています。
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